①「死に方が怖い」タナトさん
タナトフォビアの症状がある方にお話をうかがうことが多いです。
その中には、本当に多様で「そんな風にも考えられるのか!?」と毎度驚きがあります。タナトフォビアという症状は人間の根源に関わる悩みで、100人に100通りの思いや死生観、世界観があるのだと感じます。
これを読んでいる方の中には、「わたしだけがこんなに死を怖がっているんじゃないか?」「わたしはどこかおかしいのか?」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。
かくいう私も、「死が怖い」という自分の感情に対して、自分だけがおかしいのかもしれない、と感じてきた一人です。誰にも相談せず、家族にも言わず、みんな心のうちに同じような思いを抱えていて話さないだけだと、どこかで期待して。そんな風に、普通の顔して生きてきました。
ひとりじゃないよ、だいじょうぶ
こんな人も、あんな人もいるよ
そんなことをお伝えできればな、と思い、許可をいただいた方のお話をまとめていきたいと思います。

目次
- 年に1回「その日」がくる
- 始まりは「死に方」から
- ワクワクするかしないか!それが問題だ
- 始まりは意外と遅い
- まとめ
1. 年に1回「その日」がくる
今回のタナトさんは30代の男性の方です。穏やかで落ち着いた雰囲気の方でした。
その方にタナトフォビアの急性期症状(突然やってくる死の恐怖)がやってくるのは、なんと年1回!
タナトフォビアの症状のある方の中でも、少なめの頻度ではないかと思います。(今これを書いている筆者も現在は同じくらいのペース)
ただし、そんなに少ないタナトフォビアの症状も、決して無くなるわけではなく、増えるでも減るでもなく、経過しているそうです。そして、タナトさんあるあるだと思いますが、死が怖くなる急性期症状は夜寝る前に訪れる。
「突然降ってくる」「突然湧いてくる」
そんな表現をする方も多いですね。
「あぁ、今日は"その日"か」と思って、全身汗でびっしょりなりながら、眠れぬ夜を過ごすと言います。
年に1回なので、「その日」が来たら抗うことは諦めて、ひたすら死について考え続ける。ひたすら死の恐怖を感じ続ける。
空が白んできて、朝がやってきて、そうしてようやく日常に戻れる。普段の朝起きる時間がやってきて、いつものように朝の支度を整えて、仕事に向かう。そうしてようやく長かった「その日」が終わる。そう、お話されました。
テレビを見たり、動画を見たり、気を紛らわせることもやってみた。だけど、映像は見ているようで見ていないことがある。結局、思考を止められない。「だから、最近では抗うことなく朝までコースが多いです」と。
2. 始まりは「死に方」から
今回のタナトさん、死の何がそんなに怖いのか?
それは、「死に方」が怖い! だそう。
考え始めるのは、いつも「死に方」から。
自分はどうやって死ぬのだろう。老衰?病気?事故?事故にも色々あるな?どんな事故?そうやってグルグルグルグル、死に方を考えてしまう。
しかも、今回のタナトさん、一番怖い死に方がある。
それは、「電車事故」!!!
非常にこれでもかと「電車事故」を恐れているというのです。
電車事故が怖くて仕方がないというタナトさん。電車に乗る時は、生存確率の最も高い真ん中の車両、一つの車両の中でも生存確率の最も高い真ん中のドアから乗るそうです。
電車事故の生存確率なんて、知らなかった…。と目からウロコが落ちました。
理由として考えられることとして、「毎日電車通勤をしている」ことが関係しているかもしれない。毎日使うからこそ、電車事故に遭うのではないかと恐怖を感じるのかもしれない、と。
そして、
電車事故に対する強い恐怖は、「恐怖」というよりも「嫌悪感」に近い、と教えてくれました。集合体恐怖症の方が、カエルの卵や植物の細胞等の集合体に嫌悪感を覚えるのと同じで、電車事故への説明のつかない嫌悪感が今回のタナトさんにはあるということです。
「こわい」よりも「いみきらう」感覚に近い‥‥‥とても興味深いです。何かトラウマティックな出来事でもあったのか?思い起こすと、2005年のJR福知山線脱線事故、このニュースにとても大きな衝撃を受けた、とお話されました。ただ、それだけではないような様子です。
どうして、電車事故が極端に怖いのか、忌み嫌うのか。その根本の原因はまだ分かっていない、ということ。どうしようもないDNAレベルでの拒否感が根底にあるような気がしました。
私自身も集合体恐怖症の気があるので、説明のつかない嫌悪感についてはとてもよくわかります。とりあえず、見ていると気分が悪い、だけれども目を離せない。その気持ちの理由は分からない。同じような感覚なのだと思いました。
そんな方、他にもいらっしゃいますか?
是非色々お話をうかがいたい…ご連絡をお待ちしております!
3. ワクワクするかしないか!それが問題だ
そんなタナトさん。
では、タナトフォビアあるあるな他の事柄への恐怖感はどうなのだろう?
当然気になりますよね!
ということで、色々お聞きしました。
- 宇宙は怖い? → NO!
- 飛行機は怖い? → NO!
- 新幹線は? → ちょっと怖い
- ジェットコースターは? → NO!
- 海は? → NO!
- 自動車は? → そんなに怖くないです
いかがでしょう?とっても面白いですね!
今回のタナトさんのおっしゃることには、宇宙や飛行機は「ワクワク!」が勝ってしまいますと。恐怖感よりもワクワクが勝つので、怖くないそうです。
飛行機も普段あまり乗らないので、乗ったらどうしてもワクワクしちゃう!とても可愛らしい方です!電車事故を恐れて、生存確率を調べて真ん中に乗る人とは思えません。
タナトフォビアが死の恐怖を想起させる対象として、最も多く上がるのは「宇宙」「海」です。それらは、今回のタナトさんに限って言えば「ワクワク!」に負ける‥‥‥と。
なんとタナトフォビアの海は深くて広い。恐るべし。
ちなみに、筆者も飛行機は怖いけれどもワクワクします。恐怖感とワクワクは紙一重、そして共存するモノなのですね。
4. 始まりは意外と遅い
そして、タナトフォビアな人は、筆者の肌感覚からすると5~8歳くらいから「死が怖い」と自覚のある方が多いです。
筆者自身も5歳から「死が怖い」と夜に1人で泣いている子どもでした。
今回のタナトさん、死が怖いと恐怖感に襲われるようになったのは、お子さんが生まれてから(成人してから)とのこと。
子どもが生まれてから、死が怖いと眠れぬ夜が突然始まったとおっしゃっていました。そのような方いらっしゃいますか?
これまでにお話をうかがった中で、5~8歳くらい以外の時からタナトフォビアの症状が始まったとお聞きしたのは2名です。今回のタナトさんと、もうおひとり。もうおひとりは、祖父母の死を間近で経験してから、死について考えるようになり怖くなったとおっしゃっていました。
このように、自分の身近な人の誕生や終わりに遭遇すると、人は自身の終わりについても想起するようになり、人によってタナトフォビアの症状を感じるようになるのかもしれません。
あるいは、ヒトはその成長過程で5~8歳頃に「死」という抽象的な概念、かつ、必ず訪れる事象について考えるようになり、一部のヒトが恐怖を感じるようになる。
一旦、それを忘れる人もいるが、ずっと怖いままのヒトもいる。
一旦それを忘れていたヒトも、大人になって自分の身近な人の生死に触れることで、再び「死」の恐怖を想起する。
こんな仮説が考えられるかな、と感じています。
5. まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回ご紹介したタナトさん。「そうそう!」と身近に感じた方も、「私と全く感じ方が違う!」と感じた方もいらっしゃったと思います。
筆者とはまた全然違うタナトフォビアの様相を教えていただき、私自身目から何度も鱗が落ちました。
これからも、タナトフォビアの全容を理解すべく、色々な方のお話をうかがいたいと思っております。
ご感想やご意見、お待ちしております。
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